無我霧中

本日は写真撮影を行ないました。

太陽が出ていると、影がはいりこんで、良い写真となりませんので、今日の曇りは有難い天気でした。特に今日は朝から霧が厚く立ち込めていましたので、写真撮影にはもってこい。

それと霧の中での写真前の清掃作業は、平安時代にタイムスリップした感覚。

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当時の陶工たちも身をかがめて、焼き物を窯につめたり、取り出したりしたのでしょうか。

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写真撮影が始まりました。

調査区近くにいると写真にはいりこんでしまうので、すこし遠くに離れて撮影を見守ります。

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西山1号窯は、人里はなれた山中にあり、山の斜面と斜面のあいだの

猫の額ほどの平坦な部分に築かれています。

西山1-1号窯は床面が比較的水平に築かれており、高温焼成を必要としない

緑釉陶器の施釉工程にはこうした窯が適していたのかもしれません。

また、斜面のなかにある窪地にあるので、足元は地面に熱を吸われるように冷えますが、強風に身が縮こまるということはあまりなく、もしかするとこうした環境も窯焚きなどの作業にも適していたのかも、と思い浮かびました。

発掘調査の醍醐味は、遺構や遺物を掘り出し、それを記録するだけではなく、長期間、現地にいることでしか分からない感覚も得ることができることにあります。

調査区内に落ち葉などが落ちてこないか、注意しつつ、平安時代の陶工たちの姿を思い浮かべていましたが、

残念ながら、霧は途中で晴れ、残りの写真撮影は明日にすることにしました。

写真撮影を断念した後は、図面作成などの作業を行ないました。

1-1号窯では、窯本体の立ち上がりや詳細な構造がより伝わるように、断面図を作成しました。

1-2号窯では、昨日床面を出しましたので、新たに平面図の作成を行ないました。あと少しでこれも終わります。

現場も終盤に入りましたが、気を引き締めてより一層頑張りたいと思います。

(J, N)

明日の写真撮影に向けて

本日は1-2号窯では、昨日に引き続き床面を求めて、瓦と須恵器を重なった層ごとに取り上げました。

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全てで12面もの平面図を作成し、やっと窯の全長に渡って床面を検出できました。これで、床面の傾斜角度や構造など、様々な重要な情報を得られました。

窯の殆どは緩い傾斜ですが、焚口に近づくと傾斜が急になる構造であることが判明しました。

図面が終了した後、清掃に入りました。

1-1号窯の方では、掘削と図面作成の作業が既に終わっていて、本日は明日の写真撮影に向けての清掃を行ないました。

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やはり写真のため、遺構だけじゃなくて、遺構の周りも綺麗にしたいです。

清掃はまだ終わっていませんので、明日の朝も引き続き行なう必要がありますが、今回の調査の大きな節目と言えると思います。

宿舎に戻ると、おいしい晩御飯が待っていました。英気を養って明日も頑張りたいと思います。

(J)

見えてきた床面

朝からどんよりとした曇り空で、雨が心配されましたがなんとか1日もってくれて一安心。

今日の1-1号窯はまだ見えていなかった窯壁を見えるように掘削していきました。

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慎重に窯のなかにたまった赤色土層の部分を剥がしていきます。

周りの窯壁を崩落させないように細心の注意を払っています。

 

続いて写真撮影のために遺構周辺を清掃しました。

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土を剥がすだけならともかく、遺物がたくさんあると、削ったり浮かしたりせずに土だけを剥ぎ取らなければならないのでとても集中力が必要です。

1-2号窯では、昨日に引き続き平面図の作成を行なっています。

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記録をして遺物を取り上げる作業を一層一層続けていき、深いところでは8層もの瓦が堆積していました。

部分的には窯の床面が顔をのぞかせてきました。

底が見えた(調査の終わりもみえてきた!?)ので、喜びもひとしおでした。

明日もこの作業を続けていきます。

 

連日の作業で調査団も疲れが溜まっているなか、それをふきとばすには餃子しかありません。

なので、今日は餃子祭りでした。

しかも1人あたり10個という大盤振る舞い。宿舎は異様な熱気につつまれています。

これで明日からも頑張れます。

(W,T)

記録作業の続き

朝、目覚めると雨音。

現場中は特に憂鬱な気分になります。

本日は1-1号窯と1-2号窯の記録作業を行ないました。

西山1号窯の窯は両方とも残りが非常によくて、窯構造や機能について貴重な情報をたくさん提供してくれる資料ですので、丁寧に記録する必要があります。

まず、毎日作業のあと遺構にかけるブルーシートを外すことから始まりますが、その上に溜まっていた雨水を汲まなければなりません。

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続いて1-1号窯と1-2号窯と二つの班に分かれて、図面の作成を併行して行ないました。

1-1号窯では、アゼの土層断面図を作成しました。

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発掘調査では土層を色や砂の細かさ、混入物などで見分けます。

そして、その堆積状況を図で描くことにより、西山1号窯の場合は、窯がどのようにして壊れたのか、窯の床や壁の角度や特徴などを記録することが可能となります。

1-2号窯では、窯の中の平面図を作成しました。

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窯の中の状況がそのまま残っていて、瓦や須恵器が大量に入っています。しかも床面との間に何層もたまっています。

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遺存状態がこのように良好なため、窯内の半分を残しつつ、残る半分を慎重に下げていきます。しかし、一気に遺物を取り上げるのではなく、遺物の表面が出ている面を層ごとに記録した上で、取り上げ、そしてその下から新たに現れた遺物の表面を綺麗に掃除して、また記録を行ないます。この作業を何回も繰り返さなければなりません。

明日もこの作業の続きを行なう予定です。

現場が始まってもう一ヶ月ほど経過していますが、油断せずに明日も頑張りたいと思います。

宿舎に帰ると、カレーのにおい。

(J)

西山1-1号窯の内部構造について

今日は久しぶりに穏やかな天気となりました。

昨日に引き続き、今日も図面の作成を行ないました。

平面図や断面図を丁寧に仕上げていきます。

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先日にもこのブログ上で補足させていただきましたが、今日も引き続き西山1-1号窯について

内部の構造を中心にお伝えしたいと思います。

1-1号窯は平面形が三角形状を呈する窯構造をしています。

そして、その内部からは、窯の床に立てられていたとされる円柱形の粘土製の支柱や

その上に2次的な床面を作るために使ったと考えられる粘土ブロックが、

倒れた状態でみつかっています。

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また、支柱などに混じって、製品の須恵器や瓦が窯の中で出土しています。

1-1号窯は今後も記録作業を進めていく予定です。

明日には、2夜連続の窯の説明を行なうつもりです。

宿舎に帰ると、温かいスンドゥブが待っていました。

とびきりの辛さと温かさで鋭気を養い、明日も引き続き図面作成に全力を注ぎます。(U)

 

 

 

図面製作継続中

調査も後半に入り、毎朝の登山にも余裕がみられるようになりました。

運動不足も解消に向かいつつあります。

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本日の作業も図面作成が中心に。

遺構の平面図や断面図、調査区全体の図などを分担して進めています。

遺物の検出状況の図化も、出土量が多いため一苦労です。

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また、窯跡のことに詳しい研究者の方にもお越ししただき、多くのご教示をいただきました。

 

そして宿舎に帰ると、生活当番の作ったパウンドケーキが振舞われました。

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甘いケーキと彼らの笑顔は私たちの疲れた体を癒してくれますね。

明日も引き続き図面の製作を行ないます。

限られた時間の中ですが、がんばりましょう!

(H)

分析試料の採取

本日は、土嚢も凍るような寒さからのスタートでした。

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(手にとった土嚢も、氷のような冷たさでした。)

調査内容については、記録作業が続きます。

平面図の作成では、窯に糸を張り巡らせて作った格子の中の遺物や遺構を、慎重に測っています。

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窯の中の状況を、細かく検討を行ないながら記録するため、大変な作業となります。

また、調査区内の遺物や遺構に標高を落としていく作業も行ないました。

午後からは、調査区内で出土している炭を、C14年代法と呼ばれる科学的な年代決定の手法を用いるため、サンプリングしていただきました。

2基確認されている窯のうち、各窯にかかわる土の中にある炭を、いくつかの地点から採取しました。

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分析の際に、近くにある現代の有機物が混入しないように、細心の注意を払います。

採取した試料は、変質しないようアルミホイルに包んで保管されます。

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このような小さな炭からも、それらの年代を比定することができるのです。

本日は作業の内容のみとなってしまいましたが、明日以降も作業内容と調査の成果をお伝えしていこうと思います。

(T)

 

西山1-1号窯の構造

3月に入ってしばらくたちましたが、今日はこれまでの調査の中でも随一の寒さでした。

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主な作業は図面作成のため、軍手をはずして図面を書く学生の手はかじかみ、休憩時間には一目散にストーブの周りに集まります。

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調査中に雪がちらつくときもありました。

本日の作業は以上です。

 

また、本日の新聞報道などで発表されたましたが、西山1号窯の調査内容について、本日から少し補足させていただこうと思います。

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上に挙げているのは、先日(3月9日)に撮影した調査区の全景写真です(調査区の南西から撮影)。

西山1号窯 グリッド・調査区配置 4次調査 調

(撮影位置模式図です。クリックで拡大)

写真の手前と奥に、赤色の土の範囲がみえると思いますが、それらが窯跡です。

まずは、手前にみえる調査区1について説明します。

こちらでは、現在1-1号窯と呼んでいる窯が検出されています。

窯の特徴としては、傾斜の緩いほぼ平坦な場所に作られ、平面プランがやや丸みを帯びた二等辺三角形を呈します。このようなものは篠窯跡群では10世紀からみられる形態ですが、その中でも西山1-1号窯は新しい時期にあたります。

窯には2つの焚口(たきぐち)が付き、二等辺三角形の頂点から煙を出す構造をしているものと考えられます。

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(写真のうち、下の2人がいる位置が焚口です。写真の上部にある頂点が、煙を出す部分と考えられるところです。)

赤くみえる部分については、窯の中の温度が上がり熱を受けた範囲です。周辺には灰原と呼ばれる炭や窯での失敗品が堆積した黒い層が広がっています。

この1-1号窯については、今後も記録作業を行ないますので、明日もこの窯について説明させていただく予定です。

(T)

記者発表

本日は、朝から雲行きの怪しい一日となりました。

早く調査を進めるために、皆で力を合わせて図面の準備を行ないます。

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しかし雨が強くなってきたため、本日も撤退を余儀なくさせられました。

明日こそはリベンジしたいものです。

また、午後からは亀岡市の市役所にて、新聞記者の方へ記者発表を行ないました。

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雨天のため現場の見学はできませんでしたが、遺構の説明のみでなく、調査の中で出土した遺物を持参し、詳しく説明します。

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どのような記事となるか、楽しみです。

また、この場を使いお知らせさせて頂きますが、今回の発掘調査では、残念ながら現地説明会を行なわない予定です。

調査区を広げたことや、昨年や今回の調査での天候不順の後の周辺の整備が不十分であり、見学環境が整っていないことが主な原因です。

期待しておられた方には大変申し訳ありませんが、ご理解いただけましたら、さいわいです。

なお、現地でのご説明ができない代わりに、調査成果や現状については、明日以降のブログで今まで以上に詳細にお伝えするよう努力しますので、ご期待ください!

(T)

昼休みの踏査

今日の現場も、ブルーシートの上にたまった水を掻き出す作業から始まります。

昨日から降り続いた雨のために、たまっていた水はかなり多く、全て掻き出すのには大変苦労しました。

やれやれ。

その作業が終わると、窯内の埋土を取り除き、遺物や焼台の輪郭がはっきり見えるようにしました。

窯壁を壊さないように不自然な体勢をとり続けたので、身体の節々が痛みました。

特に腰の左の背骨付近が悲鳴をあげ、こまめな体操が必要です。

図面をとって記録するのも発掘において重要です。

無題

 

昼休みには周辺の遺跡を踏査しました。

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急な斜面を登ったり降りたりするなど、かなりアスレチックな感じで、遺物を見つけては、いつもとは違う昼休みにわくわくしました。

昼過ぎにOBさんがいらっしゃいました。

差し入れを持ってきてくださいました。ありがとうございます。

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一日の作業を終え、へとへとに疲れて宿舎に帰ってくると、先輩がつくったハヤシライスが待っていました。

思わずおかわりに駆け出してしまうほどおいしいシチューでした。

昨日の悪天候のせいで今日はかなり大変でしたが、負けずに明日もがんばります。

(S,W)