西山1号窯で検出された2つの窯跡は、篠窯における焼き物から瓦へ、製品の内容が変化する具体的な過程を知る貴重な手がかりとなりました。
興味深いことは、小型三角窯である西山1-1号窯の廃絶のあり方でした。
操業していた窯がその役目を終えるときには、いくつかのパターンが考えられます。
焼成途中に窯が崩落し、そのまま放棄された場合。
あるいは窯の崩落後に焼き物を取り出して、廃棄される場合。
経年劣化などのため、長年使用されずに廃絶する場合。
様々な場合が想定できますが、窯詰め状態で発見される窯跡は数えるほどしかありません。
西山1-1号窯では、窯の中に天井が落ち込んだ状態が確認できました。
この記録をしたのちに、天井を除去していくとき、
調査者の胸のうちは、
窯詰め状態の焼き物が見事に出土するのではないか、という期待8割、
あまりに多く出土して調査が長引きすぎると、どうしようといった不安2割
でしたが、驚くことに天井を取り除いたとき、あらわれたのは焼き物ではなく、それをのせていた焼き台でした。
このことは西山1-1号窯が廃棄されたとき、窯のなかには焼き物がほとんどはいっていなかったことを示します。
そして、倒れた焼き台を観察していくと、放射線状に倒れていることが分かります。
窯の天井が落ち込み、その衝撃で柱状の焼き台が倒れたのでしょう。
そして、焼き台のいくつかは割れているので、自然と天井が落下したというよりは、人が窯の上にのるなどして天井を崩落させたことを思わせるあり方です。
つまり、西山1-1号窯は、焼成途中の崩落や操業後の放置といった廃棄のパターンではなく、
意図的に廃絶されたと想定できるのです。
すこし想像をたくましくすれば、焼き物ではなく、より瓦生産へ生産の比重を高めようとした陶工たちが、従来的な窯を壊し、より新たな窯を求めたことが、西山1-1号窯の検出状況から読み取れるのではないでしょうか。
さて、本日の作業は、窯構造を把握するために補足的な掘削作業を行ない、その記録作業をおこなったこと、岡山理科大学の畠山先生に考古地磁気年代測定のためのサンプルを採取していただいたことです。
地磁気年代測定では窯の床面より10cm程度のブロックサンプルが必要となります。
サンプルを採取する場所の周囲を掘りくぼめ、石膏を流し固め、ブロックを採取しました。
測定の結果が楽しみです。
昼休みには日光浴をしながら、食事をたのしめる季節となってきました。
ピーピーピーヴゥエィと特徴的な鳴き声をした鳥が春の訪れを告げているかのようでした。
(N)