本日未明より台風に見舞われたため、午前中は激しい風雨のなか、宿舎で現場の状態を案じながら過ごすこととなりました。
しかし、午後からは台風一過の晴天。現場での作業を行なうことができました。
まず、本日の作業は昨日からの豪雨で調査区に溜まってしまった水を抜くことから始めました。ブルーシートでしっかりと保護してあるとはいえ、やはり調査区には水・泥などが多少は入り込んでしまいます。
そしてその後は、良い状態で写真を撮影するため、調査区内の泥や土をきれいに除去していきました。同時に、調査区2では図面を仕上げる作業も行ないました。
また、OBのKさんが奈良からなんとか来訪。足元も悪いなか、ありがとうございました。
今回の西山1号窯の調査では、三叉トチンが約10片程度出土しました。
三叉トチンとは、緑釉陶器を重ねて焼く際に用いられるもので、焼き物同士の融着を防ぐために用いられた道具です。
Kさんが参加された大谷3号窯の調査でも、三叉トチンが出土しました。
しかし、大谷3号窯の三叉トチンは篠窯における緑釉陶器導入期のものであり、
今回の調査で得られた三叉トチンは、緑釉陶器生産の終末期に属すると推測されます。
これまで、篠窯の緑釉陶器は、トチンを用いず、重ね焼きの痕跡がのこるなどの粗雑な印象をも
たれてきましたが、大谷3号窯や西山1号窯の調査によって良質の緑釉陶器も生産されていたことが明らかとなりました。
とはいえ、どうして導入期と終末期にのみ、三叉トチンを用いるのかといったことなど、解決されていない課題もあります。
このことは遺物の分析を続けていく中で、明らかにしたいと思います。
調査も佳境を迎えています。そろそろ疲れも出てきますが、皆様のご支援に感謝しながら作業に臨みたいと思います。
(K)