1.平安時代と平安京

平安時代とは?

篠窯がもっとも盛んに「やきもの(焼き物)」の生産をおこなっていたのは、平安時代でした。

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図1 藤原道長

平安時代とは、桓武天皇(かんむてんのう)が都を京都の平安京にうつした794年から始まります。

その終末時期は、続く鎌倉時代がいつから始まるとみるかによって色々な説があります。守護(しゅご)・地頭(じとう)の設置された文治元年(1185年)説が有力ですが、おおむね12世紀末ころまでを、一般に平安時代と呼んでいます。

この平安時代は、その初期の段階には、桓武や嵯峨(さが)といった天皇が強力な権力を持っていましたが、9世紀後半

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図2 武士

の頃から藤原氏が摂政(せっしょう)や関白(かんぱく)として天皇を補佐する形で、実質的な政治の中心を占めるようになっていきます。なかでも栄華をきわめた藤原道長(ふじわらのみちなが、図1)は有名でしょう。

また、この時代の後半には武士(図2)が登場し、武装した集団として、勢力を強め、後の鎌倉時代へとつながっていきます。

 

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図3 紫式部

 

この時代は、さまざまな文化が花開いた時代でもありました。文学の面では、中国起源の漢字から「ひらがな」という日本独自の文字がうみだされ、「かな」を用いた小説などが書かれるようになりました。女性の文学者が目立つのもこの時代の特徴で、身分の高い人々、特に男性を中心にしていた文学が、広く多くの人々(より幅広い層)に普及していく点でも、文化的には重要な時代でした。代表的な文学作品として、紫式部(むらさきしきぶ、図3)の源氏物語や清少納言(せいしょうなごん)の枕草子(まくらのそうし)などがよく知られているところです。

 

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図4 最澄と空海

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図5 平等院鳳凰堂

宗教の面では、805年に最澄(さいちょう)が天台宗を中国から伝えて、続く806年に空海(くうかい)が真言宗をもたらし(図4)、特に密教(みっきょう)と呼ばれる新たな仏教が日本で受け入れられました。さらに、平安時代の中ごろからは、阿弥陀仏(あみだぶつ)を信仰する浄土教(じょうどきょう)が盛んになり、宇治の平等院鳳凰堂(びょうどういんほうおうどう、図5)なども造営されました。そして、貴族を中心に信仰されていた仏教が、徐々に一般庶民へと広がっていくことになります。
このように、平安時代は、中国などからもたらされた諸文化をもとに、日本のなかで新たな発展をとげ、多くの人々に広がっていきます。それは日本的な形として後の時代にも続くことになり、日本の文化の原点が形作られた時代ともいえます。

平安京とは?

平安京は、現在の京都市に造営された、かつての都の名称です。奈良盆地南部の藤原京(694~710年)、奈良盆地北部の平城京(710~784年)、京都盆地南西部の長岡京(784~794年)の後、桓武天皇は都を平安京にうつします。それ以後、明治2年まで、つまり794年から1869年まで、この平安京の地に首都が置かれ続けることになります。

日本での都造りは、中国の唐代(とうだい、618~907年)の都、長安(チョウアン、現在は陝西省西安)をモデルにして、平城京が造られ、その構造を引き継ぐ形で平安京が生まれます。平安京の北中央には、東西約4.6キロメートル、南北約5.3キロメートルの規模で平安宮が位置します。平安宮は現在でいえば、皇居と官庁街に当たる、内裏(だいり)、大極殿(だいこくでん)・朝堂院(ちょうどういん)などからなります。

平安宮から南には中軸となる直線道路、朱雀大路(すざくおおじ)がのび、さらに京内は碁盤(ごばん)の目状に、東西・南北の道路が配置されました。ただし、京や宮のまわりに城壁がなかったのは中国、長安との大きな違いで、日本的な特徴といえます。この平安京は、次第に京の西半分に当たる右京(うきょう)が衰退し、さらにさまざまな変容をとげて、中世の京都へと移り変わっていきます。

平安京は、平安時代には、日本の首都として、政治・経済・文化の中心地として機能しました。それは、日本列島各地からもたらされるさまざまな物資の一大消費地であるとともに、日本列島全体に向けての諸文化の発信地でもありました。その平安京の西に近接する地域に、食器をはじめとする焼き物を作って、平安京やその周辺に住む人々を支えた篠窯が営まれることになります

《参考文献》
青木美智男他12名 2004 『日本史B』 三省堂
正進社 『新中学総合歴史 地図/年表/資料』

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